紅茶の起源 |
「大航海時代、中国からイギリスまで緑茶を運ぶ途中、赤道直下の蒸し暑さで茶葉が発酵してしまった。これを飲んでみたところ、大変な美味。これが紅茶の起源である」という俗説もありがすが、実際には、中国の烏龍茶を進化させて紅茶が生まれたというのが本当のようです。1662年、ポルトガルの皇女キャサリンがイギリス王室に嫁いだときに持参したのがきっかけとなり、イギリスで紅茶が親しまれるようになりました。1823年には、植物学者のR・ブルース大尉が、インドのアッサムで自生の茶樹を発見し、イギリス内での製茶事業が進展し、紅茶文化も大きく花開きました。 イギリスの紅茶ブームを見て、日本でも紅茶を製造しようと、1875年、明治政府による紅茶伝習所が作られました。1906年には「明治屋」がリプトン紅茶を初めて輸入しました。その後、戦争への兆しが強くなったため、1938年には輸入が禁じられ、30年の間、紅茶は日本から姿を消しました。ようやく、1971年に輸入が自由化し、気軽なティーバッグの登場などで一般家庭でも親しまれるようになっていきました。 |
紅茶の種類 |
紅茶の分類は、産地によるものと等級によるものがあります。 【産地別】 ◆インド 世界一の紅茶輸出国。代表的な産地〔ダージリン、アッサム、シッキム、ニルギリ〕 ◆スリランカ・セイロン セイロン紅茶でお馴染み。代表的な産地〔ウバ、ディンブラ、ヌワラエリヤ、キャンディー〕 ◆ネパール ヒマラヤでの高地栽培。代表的な産地〔カンヤム、シャングリラ、マルーン〕 ◆中華人民共和国 すべてのお茶のルーツ。代表的な産地〔祁門、正山小種、雲南、英徳〕 ◆その他 代表的な産地〔ケニヤ、ジャワ、ラミン、ジョルジ、リゼ、エルブーズ〕 |
【等級別】 等級とは茶葉の形状と大きさ(木のどの部分の葉を使っているか)を示すもので、クオリティーの高低ではありません。まず、葉の状態によってフルリーフ、ブロークン、ファニングの3つに分類され、さら葉の大きさによって等級が分かれます。 |
フルリーフ(全葉) | |
S(スーチョン) | お茶の木の下の方の大きな葉。 |
P.S. (ペコ・スーチョン) |
Sの次に大きな葉。 |
P(ペコ) | 基本等級。2枚目の若葉。 |
O.P. (オレンジ・ペコ) |
基本等級。1枚目の若葉。 |
F.O.P. (フラワリー・オレンジ・ペコ) |
まだ開いていない芯芽。 |
G.F.O.P. (ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ) |
ツヤのある芯芽(ゴールデンチップ)を多く含む。 |
T.G.F.O.P. (ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ) |
ゴールデンチップがとても多い。 |
F.T.G.F.O.P./S.T.G.F.O.P. (ファイン(スペシャル)・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ) |
ゴールデンチップがほとんど。 |
S.F.T.G.F.O.P. (スペシャル・ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ) |
ゴールデンチップで、質・量ともに最上級。 |
ブロークン(カットした茶葉) | |
B.P.S. (ブロークン・ペコー・スーチョン) |
PSをカットしたもの。CTC製法の茶葉の意味で使われる場合もあります。 |
B.P. (ブロークン・ペコー) |
Pをカットしたもの。 |
B.O.P. (ブロークン・オレンジ・ペコー) |
OPをカットしたもの。 |
F.B.O.P. (フラワリー・ブロークン・オレンジ・ペコー) |
FOPをカットしたもの。 |
G.B.O.P. (ゴールデン・ブロークン・オレンジ・ペコー) |
FOPをカットしたもので、ゴールデンチップが多い。 |
T.G.B.O.P. (ティッピィ・ゴールデン・ブロークン・オレンジ・ペコー) |
GBOPより更にゴールデンチップ含有量が多い茶葉。 |
T.G.F.B.O.P. (ティッピィ・ゴールデン・フラワリー・ブロークン・オレンジ・ペコー) |
TGFOPをカットしたもの。 |
ファニングス(粉砕した茶葉) | |
B.O.P.F. (ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス) |
BOPをさらに細かく砕いたもので、形はほぼ球状。 |
P.F. (ペコー・ファニングス) |
CTC製法で生成されたBOPF。OFオレンジ・ファニングスと表記される場合もあります。 |
D.(ダスト) | 0.3〜0.5ミリ程度のほぼ粉末状のもの。 |
*CTCというのは製法のことで、Crush(潰す)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字をとったものです |
ミルクティー |
イギリスのティーといえばミルクティー。今では世界中で愛されている紅茶です。 (1) 紅茶を淹れるときの水は、ミネラルウォーターより水道水が適しています。汲みたての水道水をやかんに入れて、コポコポと泡が5円玉くらいの大きさになるまで沸騰させます。 (2) お湯が沸いたら、空のカップに注いで、カップを温めます。カップを温めている間、やかんはコンロに戻して、5円玉コポコポをキープしてください。 (3) 紅茶の葉はカップ1杯に対し、ティースプーン1杯。以前は、ポットのための1杯と言って、カップの分+1杯分の葉を入れていましたが、最近はどちらでもお好みでといわれています。葉の大きさが大きいもの(OP)は大盛りで、小さいもの(BOP)は中盛で1杯です。 (4) 紅茶の葉をポットに入れたら、勢いよく5円玉ポコポコのお湯を注ぎます。葉を充分にジャンピングさせるためです。注いだらすぐ蓋をしてティーコージーで蒸らします。大きい葉で6分、小さい葉で4分を目安にそのまま置いてください。 (5) 時間がたったら、紅茶の濃度を均一にさせるため、蓋をあけてスプーンで軽くかき混ぜます。最後に茶こしを通して、温めたティーカップに紅茶を注ぎます。 (6)最後にミルクを注ぎます。この場合のミルクは牛乳のことです。ミルクティーには低温殺菌牛乳が適しています。カップに注ぐとき、ミルクが先か(ミルクインファースト)後か(ミルクインアフター)はお好みで。ミルクは温めず、常温のものを使ってください。 |
ハーブティー |
フレッシュな香りとさまざまな効用で人気のハーブティー。心と体がゆったりくつろぎます。 ここでは、もっともポピュラーで、初心者でもクセがないミントティーをご紹介します。 (1)ハーブティーを淹れるときは、お湯は充分に沸騰させて。これは、ティーバッグタイプのものでも、フレッシュハーブを使うときも同じです。 (2)ポットにミントを入れます。葉は1杯分で2〜3枚。この時、紅茶の茶葉も入れればミントフレーバーの紅茶になります。生のミントがないときは、ドライミントでも充分です。 (3)沸騰したお湯を注ぎ、すぐ蓋をして蒸らします。蒸らす時間は、ミントの場合、5分を目安としてください。 (4)カップに注ぎ、ミントの葉を浮かべます。ミントだけのお茶なら、砂糖を入れると飲みやすいでしょう。紅茶の葉も加えたお茶なら、ミルクティーやアイスティーも楽しめます。 (5)ミントをポットに入れず、直接カップに入れて、蒸らした紅茶や薄目に淹れた緑茶を注いでも、飲みやすいミントティーが楽しめます。 (6)他のハーブティーも基本の淹れ方は同じです。カップ1杯分の分量は、ラベンダーがスプーン1杯、カモミールもスプーン1杯、マロウブルーなら花4〜5個。沸騰したお湯で3分ほど蒸らします。一つのハーブだけでなく、カモミールとサフラン、ハイビスカスとバラなど、好みのブレンドを見つけるのも楽しいものです。 |
フルーツティー |
華やかな果物の香りを楽しむお茶。茶葉に香りをつけたものとドライフルーツだけのものがあります。 (1)まずは、紅茶の茶葉にフルーツの香りをつけたフレーバード・ティーから。こちらは、通常の紅茶と同じゴールデンルールで淹れてください(ミルクティーの煎れ方参照)。この時、もう一つのポットをお湯で温めておきます。 (2)フレーバード・ティーはフランス生まれ。フランス式に、蒸し終わったら茶葉をこしながら別のポットに移します。ここから、温めたカップに紅茶を注いで楽しんでください。オレンジの皮をカップの縁に添えたり、アップルティーならりんごの薄切りを浮かべたりすると一層おしゃれです。 (3)次に、ドライフルーツティーの煎れ方です。カップ1杯に対してスプーン1杯強のドライフルーツをポットに入れます。アイスティーにする場合は、やや多めに入れてください。 (4)沸騰したお湯をポットに注ぎ、約5分置いてください。この時、ポットを保温しながら蒸らすと、鮮やかな色のお茶に仕上がります。 (5)最後に、生の果実を使ったフレッシュフルーツティーをご紹介しましょう。りんごの皮とポット1杯分の水を鍋に入れ、煮立たせます。煮立ったお湯でいつも通りに紅茶を淹れるだけで、手作りのアップルティーに。甘酸っぱい香りが楽しめます。 |
アイスティー |
香りがとんだり色が濁ったりと難しいアイスティーも基本を守ればおいしく煎れられます。 (1)アイスティーには、香味・水色ともに強い茶葉が適しています。アールグレイやディンブラ、ニルギリがその代表格。タンニンの多いアッサムやウバセイロンは、アイス向きではありません。 (2)ゴールデンルール(ミルクティーの淹れ方参照)に従って、紅茶を淹れます。茶葉の量もグラス1杯に対してスプーン1杯ですが、お湯の量はホットの半分にして、濃いめにします。 (3)したがって、蒸らし時間も半分になります。大きい葉(OP)で3分、小さい葉(BOP)で2分を目安にしてください。アイスミルクティーの場合は、やや長めに。 (4)蒸らしている間に、もう一つのポットにグラニュー糖をスプーン2杯入れておきます。ポットを温める必要はありません。ガムシロップを使う場合は、グラニュー糖もいりません。 (5)グラス一杯に氷を入れます。一気に冷やさないと、茶葉の中のタンニンとカフェインが結合して白く濁る「クリームダウン」という現象を引き起こします。一度クリームダウンすると透明度は戻りませんので、氷はグラス山盛りになるくらいに。なお、糖分を多めにすると、クリームダウンしにくくなります。 (6)紅茶が蒸らし終わったら、茶葉をこしながらもう一方のポットに移します。グラニュー糖は、静かにかき回して完全に溶かします。アイスミルクティーの場合は、グラス1杯につき100ccの牛乳を加えます。 (7)氷を入れたグラスに、一気に紅茶を注ぎます。急激に冷やすことで、香りも損なうことなく、おいしいアイスティーが作れるのです。 |
ティーバッグティー |
手軽なティーバッグも、一手間かけるだけでグンとおいしい紅茶になります。 (1)ティーバッグに使うお湯もゴールデンルールの基本は同じ。お湯は充分沸騰させてください。汲みたての水道水をやかんに入れ、コポコポと泡が5円玉くらいの大きさになるまで沸騰させます。 (2)お湯が沸いたら、空のカップに注いでカップを温めます。カップを温めている間、やかんはコンロに戻して、5円玉コポコポ状態をキープしてください。 (3)カップが温まったらお湯を捨て、新たにやかんのお湯をカップ8分目まで注ぎます。ここに、ティーバッグを、縁からすべり込ませるように静かにカップに入れます。お湯が先なのは、ティーバッグの浮き上がりを防ぐためです。 (4)ティーバッグを入れたら、手早く受け皿をかぶせて蒸らします。ティーバッグの茶葉は、粒状のBOPFやより細かいCTCなど小さな葉ですので、蒸らし時間は短め。1分程度が目安です。 (5)受け皿をはずしたら、ティーバッグを軽く揺り動かして、水色を均一にします。 |
スパイスティー |
香辛料たっぷりのエスニック料理にぴったりなのが、スパイスティーです。スパイスにはいろいろな効用がありますので、そのときの体調に合ったスパイスを選んでください。ここでは、シナモンティーをご紹介します。 (1)シナモンスティックを細かく砕いておきます。 (2)温めたポットに、ティースプーン2杯分の茶葉を入れます。 (3)1のシナモンをティースプーン1杯分と、シナモンパウダー(少々)を加えます。 (4)熱湯を約350cc注ぎます。 (5)ティーコージーをかぶせ、3分ほど抽出させてから、ティーストレーナーを通して、温めたティーカップに注いでください。 〜ワンポイント♪「紅茶に合うスパイス」〜 カルダモン:甘くてスパイシーなスパイスです。体の熱をとる作用があるので、夏バテ予防にぴったりです。 ジンジャー:ピリッとした清涼感があります。体を温める作用があるので、冷え性や風邪の予防にぴったりです。 シナモン:ポピュラーなスッキリとした香りです。解熱・鎮痛・鎮静作用があるので、風邪や生理痛に効果的です。 クローブ:口の中がさっぱりするような清涼感があります。ハーブ療法では、歯痛や歯肉炎の症状に効くといわれています。 |
スピリッツティー |
リキュールやブランデーなどを加えたものをスピリッツティーといいます。リラックスでき、1日の疲れを癒す効果があるので、英国では眠る前に飲まれていました。ティーカップにお酒を注いだときにほのかに香りがたつので、手作りの果実酒を使って、ティーパーティーを演出するのもいいですね。 (1)温めたポットに、ティースプーン2杯分の茶葉(どんな種類でも合います)を入れます。 (2) 少し高い位置から、熱湯を約350cc注ぎます。 (3)茶葉を抽出している間に、温めたティーカップにグラニュー糖をティースプーン1/2〜1杯入れます。 (4)次にカシスをティースプーンに1〜2杯(お好み)入れます。 (5)抽出が終わった紅茶を、ティーストレーナーを通して、グラニュー糖とカシスの入ったティーカップに注いでください。 |